スピーキングと英作文

そもそも英語はコミュニケーションツールですから、英語学習の将来的な目標が、いわゆる「4技能」すべてを高いレベルで使いこなせることである点には、疑いを入れません。そしてここでいう第4番目の技能は、「会話できる力」の意味を含んでいます。しかし、大学受験までに身につけておきたいスピーキング能力とは、直接に「会話力」(=双方向のコミュニケーション能力)を指すものではありません。英検やTEAPなどのスピーキング試験で測られるのは、あくまで受験者の発話のレベル、つまりコミュニケーションの下敷きとなる能力です。時期はわかりませんが、大学入試の4技能化がいずれ実現するとして、そこで試される力もほぼ間違いなく、talk ではなく speak の力です(TOEFL iBT のようなオンライン試験になるのではないかと予想していますが)。「スピーキング」とはつまり、与えられた(用意された)トピックについての口頭での論述、いわゆる演説を意味します。TEAPのスピーキングテストや英検の二次試験は、この形式で行われますが、指示に対して返事をする以外、試験官との「会話」はほとんどありません。英検では、挨拶や呼びかけに対する返事など「明るく元気に」できたかが、attitude (態度)の評価となることもあるでしょう。またTEAPのスピーキングテストの中にも、試験官とのロールプレイ(問答)が含まれていますが、会話とは異なるものです。

繰り返しますが、これらのスピーキングテストの目的は、試験官との会話の流暢さを試すものではなく、その場で示されたトピックについて、制限時間内に「自分の意見を理路整然と述べる」能力の測定として行われるものです。ですからスピーキングは、一方的に意見を述べるという点で、相手と言葉のキャッチボールを行う会話とは、まったく別物と捉えるべきと考えています。したがって当然、上達のための訓練の仕方も違ってきます。このあたりの認識について、誤解や混同が多いと思っていますが、少なくとも、日常会話の練習とは異なる訓練が、英検やTEAPのスコアアップに不可欠であることは事実です。

では、スピーキングに上達するために、普段からどのような学習を心がければよいかと言えば、私はやはり音読と英作文に尽きると考えています。英文を音読すること(恥ずかしがらずにできるだけ大きな声で読む→重要!)に慣れていれば、日頃から特別な発話訓練を行う必要はありません。そして英作文ですが、これはスピーキングそのものが、英作文の延長線上にあるからです。本番では、試験官の英語での質問に対して、解答をまず頭の中で「日本語で」考え、それを英文に変換して素早く口から出すことを繰りかえさなければなりません。つまり口頭での『瞬間英作文』を行うわけです。

“The use of nuclear power should be expanded.” Do you agree with this statement ?  Why or why not ?

上のような質問に答えるためには、①質問の意味を正しく理解できる②利点や問題点がそれぞれ1個以上思い浮かべられる③同時に自分は賛成なのか反対なのか(どちらでスピーチするか)を即断できる④その理由まで整理して英文を頭の中で組み立てられる➄組み立てた英文を淀みなく口に出せる・・以上のような力がすべて必要となります。しかもトータル1分程度、①~④までの準備時間は最初の30秒だけです。このことからも、正確に速く英作文できる力が、いかにスピーキングのカギを握っているか、おわかりいただけると思います。なお、「日本語で考える」プロセスを飛ばして、はじめから「英語で考える」などという芸当が可能なら誰も苦労しませんが、多くの受験者にとっては現実的ではないでしょう。(それができるくらいの人は英検を受ける必要もありません。)

スピーキングは台本や定型文のない、いわば口頭での「自由英作文」です。自分の考えや意見を、語彙・文法を正しく使い、支離滅裂とならないように内容・構成を考えながら英文を組み立てる必要がありますが、その前に、与えられたトピックについての知識や問題意識が多少なりともなければなりません。これが全くなければ、黙るしかなくなってしまうことにもなります。たとえば上の問題でしたら、核や原発についてニュースや新聞で報道されているレベルの知識や、安全性・必要性についての自分なりの考えがあるかどうか、さらにはそれらを表現する英語の語彙をたとえ一つか二つでも持っているかどうかが、スピーチの出来栄えに大きく影響するわけです。このように試験本番では、社会・教育問題から環境問題に至るまで、さまざまな分野からトピックが登場しますので、新聞やテレビで報じられているニュースについては、最低限の知識は持っている状態にしておくことが望ましいでしょう。また、これらのトピックに関わる(時事)英語の語彙知識をできるだけ増やしていくことが大切です。