「英文を書く」 =只管筆写=

サブタイトルの「只管筆写」は、同時通訳の草分けで、徳島にも縁の深かった、故國広正雄先生が提唱された「只管朗読(音読)只管筆写」によります。「只管(しかん)」とは、「ただひたすら」というような意味です。國弘先生が、戦後間もない頃にこれを徹底的に繰り返して、自身の英語力を達人レベルにまで高めた話は有名です。 私が英文の音読と書きを指導の中心に据えているのも、この「只管朗読只管筆写」が根底にあります。一部に時代に合わないなどとの批判もあるようですが、戦後であろうが現代であろうが、いいものはいいのです。「読む訓練をしなければ読めるようにならない」、「書く訓練をしなければ書けるようにならない」、だから「ひたすら読んでひたすら書く」という、非常にシンプルな実践です。生徒には、教室でも家庭でも、可能な限り多くさせてやりたいと思っています。

さて今回は、春休みに実施しました「春期トライアル」の内容をご紹介しつつ、「英文を書く」、「只管筆写」について、少し述べたいと思います。

特に内部生について、今回のトライアルは、普段なかなかまとまった分量の学習ができない「記述」、「筆写」を中心に行いました。以下、一部を簡単にご紹介しますと、

◇対象:中3の文法学習まで一通り終えている新中2・中3生

内容:中学文法全項目と高校初級レベルまでの内容を含む英作文問題 (問題集1冊分)→ 語句補充による英文完成、整序英作文、条件英作文、自由英作文を、1回100分、計5回で全問解法の上、正解の英文をすべてノートに書き取り。

◇対象:新高3生グループ① 国公立大学受験予定の生徒

内容:駿台「基本英文700選」に収録されている和文の英訳→ 1回150分、計6回で全問解法させました。もちろん途中でアドバイスや指導は行いましたが、あらかじめ生徒に伝えていたことは、語句を辞書で調べてでも「絶対に空所を作らない」ということだけです。今後は、掲載されている英文を週に20ずつ暗記→確認の暗唱を繰り返していきます。受験本番時点で、仮にそのうちの三割程度しか頭の中に残っていなくても、減点されようのない、正しい英文表現の引き出しを200以上持つことになり、その組み合わせたるや無限です。表現の引き出しを多く持つことは、ライティングの大きな武器です。

◇対象:新高3生グループ② 要約問題が出題される国立大学および私立大学を受験予定の生徒

内容:随時アドバイスを加えながら英語要約と日本語要約の難問に挑戦させました。(1回150分×5回) 受験校の出題パターンに限定しなかったのは、要約問題に慣れるためだけでなく、読み込みのスピードと精度の向上を目指したためです。1問20分を目標にしましたが、問題によっては40~50分かかっていましたので、期間中に解いた問題数は、予想していたほど多くはありませんでした。が、生徒にとっては、これだけまとめて要約問題に取り組むことは、普段ほとんどなかったようですので、「慣れる」という目標はクリアできたのではないか、と思っています。なお、先週あたりから、英文と全文訳の両方の要約を行う課題に取り組んでいる生徒も数名出てきています。

※上記の「スピード」と「精度」について、どのように定義するかにもよるかと思いますが、速読と精読は厳密には分けられないと考えています。解答時間に制限があるかぎり、速く深く正確に読み込むことが求められるからです。字面を追うことが速読ではなく、無制限に時間をかけて読むことが精読でもありません。国語でもそうですが、できる生徒ほど、読むスピードも速いものです。

以上、春期トライアルの内容を一部ご紹介しましたが、参加した生徒はかなりの量「書いた」という実感を持ったことと思います。「只管筆写」の期待効果は、一つには「文法・表現方法を、手を通して体に沁みこませる」こと、二つめは、「正しい英文をマネして書いているうちに、やがてそれが自分のものになる」こと、そして三つめは、筆写を繰り返す過程で、前回書きました「英語センス」が育つことです。(音読と筆写はこのセンスを育てる両輪のようなものです。)この程度では、まだまだ國弘先生の足元にも及ばないことは承知していますが、生徒は、通常学習にプラスして参加した上、他の教科も学習しなければならない時間的、体力的な制約の中で、最大限頑張ってくれました。

記述できる力、自分の意見や考えを英文で的確に表現できる力は、「理解」の次のステップであり、学校英語の集大成であると考えてよいでしょう。「マーク問題では点が取れるが、記述問題は苦手」という生徒は、まだまだ修行が足りません。