中高6年間の英語の目標について

先日、某国立大学の先生とお話をする機会がありまして、その先生からお聞きしたところでは、昨年度新入学生のTOEIC平均スコアが350前後だったようです。350といえば、英検換算で3級~準2級レベルです。準備をして臨んだ学生ばかりではなかったにしろ、大学受験直後ですから、その学生なりの最高度の英語力を有していたはずです。一般に知られているTOEICのフルスコア990というのは、リスニングとリーディング2技能試験の合計スコアで、ライティングとスピーキングは含まれません。(これらを含めると1390点満点となり、最高に難しい試験となります。)したがって、大学受験までで培った読解力があれば、リスニングで少々得点できなかったとしても、500くらいは取ってほしかったところです。(ちなみに、英検準1級はTOEIC換算で800前後ですが、1級になると950程度のスコアを持ってしても、容易に合格できません。)学部別の平均までは聞いていませんが、もし理系学生でこれくらいのスコアだったとすれば、この先英語で相当苦しむであろうことは想像に難くありません。
もっとも、中3で英検3級程度の読解力を持つ生徒の割合が2割(文科省公表データによる)、という現実の延長線上の話だと考えれば、上の状況も驚くに値しません。

さて、誤解を恐れずに言えば、中高6年間の英語の目標は、「読める」「書ける」「聞ける」の3技能習得に絞り込むべき、とりわけ「読む」「書く」の力を徹底的に高めておくべきだと考えています。「読み書き」の裏付けのない英語など、実に弱いものだからです。さらに言えば、音声にしても、中高生の学習途上において、「正しい発音に慣れる」ことは重要ですが、ネイティブスピーカーなみの「きれいな発音」で口に出すことなど必要ありません。「ネイティブスピーカーが聞いても通じる」レベルで十分です。そんなものにこだわると、まず独習が不可能になります。さらに学習の遅滞を引き起こすだけでなく、意欲の低下を招いてしまいます。それより発音記号から読み方がわかる方が、よほど学習には役立ちます。(幼児や低学年生の中にも、日本人離れした(?)発音で読む生徒もいますので、そこまで積み重ねてきた成果を否定するつもりは毛頭ありませんが。)そして、中高で学ぶ語彙・文法の知識と、その運用能力である読み書きの力が十分に育ってさえいれば、会話トレーニングは大学生になってからでも決して遅くありません。それどころか、それらの知識・運用力が未熟なまま会話を目指す人より、はるかに速く、しかも高いレベルまで到達が可能です。なぜなら、それ以前の力が揃っているため、よりきれいな発音や流暢な会話のトレーニング「のみ」に集中して取り組むことができるからです。このように、本格的な4技能習得は、中高を通じて身につけた3技能をもとにして行えばよい、つまり後からでもかまわない、というのが私の考えるところです。

「読み」と「書き」のスキルは将来英語を駆使できる人材となるための絶対条件です。これらを大学入学時に、TOEICで500くらいは特別に勉強などしなくても取れるようにまで高めておくということ、その期間が中高6年間ということです。もっと言えば、圧倒的大多数の日本人にとって、英語の読み書きをとことん学習できるのは、中高6年間をおいて他にありません。