高校生のリスニング指導 その1

高校生(今のところ2年生以上)に対して、現在メインに行っているリスニング指導の内容と手順についてご紹介いたします。すべて書くと、かなり長くなってしまいますので、今回は「その1」として、下の「ナレーションリスニング」と「会話リスニング」について書きます。

 

大きくは「ナレーションリスニング」「会話リスニング」「ディクテーション」の3つのパートを、通常は宿題の英文暗唱の確認とセットで、私の席の前に座らせて行っています。入室してすぐに行うこともあれば、長文や正誤問題の演習に取り組んでいる最中の、きりのよいタイミングで声をかけて行うこともあります。対象となる高校生の「音学習」として、ほぼ定着している感はありますので、さらに効果的な方法が見つかるまで、マイナーチェンジや素材の追加をしながら続けていくつもりにしています。(英検やTOEICを受験する大学生にも行っています。)

まず「ナレーションリスニング」ですが、短いもので300語程度、長いもので800語程度のナレーションを、スクリプトを目で追いながら聞かせますので、聴解力アップを目的とはしていません。聞こえてくる音声と同じスピードで読んでいるような感覚です。素材のテーマは、たいていの生徒が不慣れな時事的なものがほとんどですので、未知の語彙・表現が、1パッセージにつき5個~10個は必ず出現します。生徒には聞いている途中で、不明な語彙・表現にチェックを入れさせ、聞き終えた後で、私がそれらの意味を教えたり英文の解説を加えます(全文訳は行いません)。きわめて特殊な語彙も含まれますので、すべてを覚える必要もないのですが、受験用の単語集ではカバーしきれない語彙・表現を、10回やれば50~100個、実際の英文の中で学ぶことができるわけです。ただしこの学習においても、後に述べるディクテーションと同様、不明な語彙を見つけることに集中するのではなく、全文の内容把握に努めることが優先されます。そうしないと、特にタイトルで使われている語彙や、繰り返し出てくる核になる語彙の意味がわからなかった場合、最後まで内容がわからなかった、ということにもなりかねないからです。英文を読む(聞く)にあたって、不明な語彙でも、前後の文脈から何のことか大体イメージできる力をつける必要がありますが、これが英文全体のキーワードである場合、全文の理解度が左右されてしまいます。簡単な例を挙げますと、「健康」がテーマの英文で、obesity や diabetes など、キーワードとなる語彙の知識がない場合、これらが頻繁に登場するうちに「肥満」「糖尿病」、もしくはそれに近い意味で理解(イメージ)できなければ、全文を正しく理解することは非常に困難となります。つまり、「文章全体を読み取ろうとする」「文脈から判断しようとする」ことは、読解においてもリスニングにおいても、また語彙の意味を理解する上でも不可欠な姿勢であるわけです。したがって、このトレーニングは「粗くてもよいので、一読で内容把握ができるようになること」、そのために「文脈から語彙の意味を類推できる力をつけること」を主眼として行っています。時事英文を素材として使用するのは、上述の語彙増強に加え、さまざまな分野のリアルタイムな背景知識を得ることも狙いとしているからです。

次に「会話リスニング」ですが、basic-intermediate-advance と、徐々にレベルが上がる構成の素材を用いて行います。トピックもさまざま、アメリカ人が普通に会話している内容ですので、速度的にはどのレベルも準1級と1級の中間くらいだと思います。レベルによる違いはその長さで、basicが30秒程度とすれば、intermediateは1分~2分、advanceになると、3~4分にも及びます。これを一回につき3題~5題学習しますが、生徒には上半分に問題、下半分に解答とスクリプトが印刷されたプリントを渡しておきます。問題は各4問、手順は以下の通りです。

①まず、20秒で問題すべてに目を通させます。

②時間になったらすぐに音声を流します。

③生徒からリクエストがあれば、もう一度流します。(三度めはありません。)

④ひとまず解答したら、下半分の解答とスクリプトで確認します。読んでもわからない語彙や表現は、私に質問します。(会話には時々、独特の表現が出てきますので。)

これを、一回につき3題~5題行います。basicはともかく、intermediateにもなると、今のところ一回聞いて解答できる生徒はほとんどいません。二回聞かせると、どの生徒もだいたい4問中3問は正解できますが。これは、スピードについていけないというよりも、むしろリテンションの問題です。リテンションとは、「記憶保持力」のことですが、英文が長くなればなるほど、最初の方から内容を忘れていっている、ということです。英語力でなく記憶が問題ですから、これを日本語で行っても、似たような結果になるでしょう。このリテンションをどう上げるかという課題は残るものの、スピードそのものに対しては相当慣れますので、これは自信を持って言えますが、センター試験レベルのスピードと長さのリスニングであれば、ほぼ問題なく聞き取ることが可能となります。そして、次の「ディクテーション」は、上述の「リテンション」向上と、さらなる語彙力増強を目指して行っているものですが、これについては、「その2」で書きたいと思います。