リスニングと読解力の相関について触れておきたいと思います。
英検やセンター試験などで流される音声は、ネイティブスピーカーが普通に話すよりもスローな上、発音も実に明瞭で、リエゾンやリダクションなどといった英語特有の(日本人にとって非常にやっかいな)音の変化も少なく、どちらかと言えば聞き取りやすいものです。しかも、複雑な構文はほとんど使われていませんから、スピードに対する慣れだけの問題なら、少し訓練すれば十分対応できそうに思います。ところが、前にも書きましたように、聞こえてくる音声の中に知らない語彙が度々出てくると、仮にもっとゆっくり聞かせても、まったくお手上げの状態になります。逆に、その音声が聞けて理解できるならば、同じ英文を読んでも理解できるということです。つまり、読んでわからない英語は聞けない(聞いても理解できない)、したがって読めることは聞けることの大前提であると言えるでしょう。これが逆転するのは、おそらく幼児が母国語を習得するプロセスにおいてだけ、かもしれません。(アメリカ人でも日本人でも、通常は4-5歳くらいになれば、本や新聞は読めなくても大人と会話はできます。限られた語彙数ではありますが・・)
どう発音してよいかもわからない語彙が頻出し、しかも文の構造も理解できない英文をひたすらリスニングしても、効果はほとんど期待できないでしょう。それよりも、短くてもよいので、読めて内容もほぼ理解できるレベルの英文を、繰り返し聞いて口に出す練習から始め、徐々に長い英文に慣れていく方が、はるかに効果が上がります。そしてある程度複雑で速いスピードの英文でも聞いて理解できるようになるには、やはり語彙レベルから音声を意識した学習を積み重ねていくことが大切である、と考えています。