リスニング力と語彙力について

「リスニングが苦手」という生徒の場合、「耳を慣らす」ために、やみくもに多聴しても、自信を喪失するだけで、ほとんど効果がないことは、生徒本人が一番わかっています。実は、リスニングができない原因の大半は、「聴く量」が少ないことではなく、語彙不足によります。ここでは、再三書いています「語彙力」とリスニング力の関係について、少し触れたいと思います。

普通の日本人高校生であれば、センター試験レベルのリスニング原稿を、200wpm (分速200語) で読み上げられれば、聞き取ることが困難なのはもちろん、仮にスクリプトがあっても、それを目で追うことすら一瞬も気を抜けない状態になります。(実際のセンター試験は、問題によっても違いますが、だいたい120-140wpm程度のスピードです。)では、同じ英文を半分の100wpmくらいのスロースピードで聞かせたらどうでしょうか?100wpmといえば、当教室の中学生が教科書を音読するスピードとほぼ同程度か、それより少しゆっくりめのスピードです。ここで、手に取るように聞き取れる生徒と、やはり聞き取れない生徒に分かれます。聞き取れない生徒の場合、たとえさらにスピードを落として聴かせても、おそらく結果は変わらないでしょう。センターにしろ英検にしろ、リスニング問題に使用される英文は、文法的に難しいものはほとんどありません。では、なぜ聞き取れないのか、それはリスニングの練習不足というよりも、そこに登場する単語のうち、知っている(言える、書ける)単語の数が少ないから、ほとんどこれに尽きます。

「アタック25」というクイズ番組をご存じでしょうか?トップの参加者が、最後に獲得したパネルの箇所だけに映される映像を見て、人物の名前や地名などを解答するものですが、あれに似ています。つまり、獲得したパネルはその人の獲得語彙数です。これが多ければ、映される映像の面積も広く、全体像やストーリーが把握しやすくなります。一方、語彙数が少ないと、狭い視界でしか映像を見れないため、全体を把握することはきわめて困難となります。見えない部分を想像しようにも、それがあまりに大きいと、想像しようもありません。これが人物の顔であった場合、口元や片方の目だけから名前を言い当てるのは至難の業です。ここで画面に映し出される映像が、リスニングにおいては流れてくる音声であり、読解においては問題英文に相当するわけです。要するに、「多聴」がリスニング力の向上に効果を発揮するのは、一定以上の語彙力を持っていることが大前提になるということです。逆に語彙の獲得が進めば、トレーニングはもちろん必要ですが、リスニング力は確実に向上していきます。詳しくは触れませんが、会話もしかりです。話す機会があっても、語彙数が少ないと黙ってしまうしかありません。相手の言うこともわかりませんね。だからこそ語彙、それでも語彙、ということを今一度強調しておきたいと思います。